2015年平和・民主団体合同〝新春のつどい〟講演要旨
「沈黙は不道徳」
城北病院名誉院長 莇 昭三
1、選挙結果と戦後70年
沖縄での総選挙勝利は、今後のたたかいのあり方を示唆していて教訓的である。同時に、秘密保護法施行と集団的自衛権行使への対応は新たなたたかいである。
今年は戦後70年。戦争放棄の日本国憲法は世界政治に大きく貢献した。しかし米独占資本が武力で世界秩序を形成しようとし、安倍内閣が日米同盟の完全復活を礼賛し、独占企業本位の国づくりをするなかで、日本が再軍備へと向かう可能性は大きくなった。戦後日本の平和の基盤が大きく揺さぶられている。
2、「積極的平和主義」の中身
「イスラム国」人質事件の直前、安倍首相は中東を訪問し総額2,900億円をばら撒いた。この訪問で注目されるのはゼネコン・銀行・商社など四六社の首脳を引き連れて日本製品を日本政府が買い、それを各国に渡すという資本の番頭采配だったことである。結局、安倍外交は「国際貢献」と言いつつも日本独占企業の海外進出の手先となっている。これではやがて企業防衛のための「自衛隊派遣」となりかねない。
3、歴史を振り返って
張作霖を殺害し、柳条湖事件をデッチ上げ、日本は「満州国」を建国した。私の人生の最初の記憶がこの時の〝提灯行列〟である。
一方で昭和恐慌からの脱却が庶民の願望となり、「満蒙は生命線」と宣伝され、農家の二男三男は海を渡り、教科書も「ヘイタイ ススメ」に変わり、「満州国」を守り石油ルート確保するためとして戦争に入っていった。真珠湾攻撃のラジオ報道で初めて国民は戦争を実感した。
大本営警保局は真珠湾攻撃の翌日、『記事指し止め事項』として、
一、止むを得ず立ち上がったことを強調すること
一、戦況は好転し、絶対に有利にあることを鼓吹すること
一、国民の中に英米に対する敵愾心を執拗に植えつけること
を示し、報道に介入していった。
戦況の悪化につれて学徒出陣、学童疎開、防火・竹やり訓練など、ほぼナンセンスなことを国民に強い、鶴彬の「手と足をもいだ丸太にしてかえし」「胎内の動き知るころ骨がつき」のような状況を生み、日本中が焼け野原となった。
即ち国民はいつの間にか戦争に参加していたのだ。「資源がない」「国が狭い」と言って国民の不満を外に向け、「勝った」と報道してジャーナリズムを徹底的に利用し、「お国のため」と敵愾心と愛国心を煽り、ムラ社会を活用して「貴様、日本人か!」と抵抗できなくする。戦争はこういう形で少しずつ入っていく。
4、最近の危険な歩み
「新ガイドライン」「周辺事態法」「テロ対策特別措置法」「国民保護法」「防衛庁が〝省〟」「ガイドライン改定」「秘密保護法」「集団的自衛権行使容認」などの近年の動きをみると、まるで〝いつか来た道〟。憲法九条を変えようとする勢力が声高で、15年戦争が美化され、マスコミが権力に支配され、「悪の中枢」論に疑問を持たず、民主教育が改悪されていることを勘案すると、今は戦争前夜かも。
5、いま、人々に訴えたいこと
〝沈黙は不道徳〟
未だに関係国と「戦争終結平和条約」を結んでいない現状ではあるが、懸念あるなかで日中韓共通の歴史認識を持つべく努めるのは重要である。
前の「戦争」は時間をかけてやってきて、国民が気づいたら既に始まっていた。そこから反対するには大変な勇気がいるし、遅すぎる。「いまからでもおそくはない…」という峠三吉の言葉もある。
私たちには過去に起きたことを記憶に留める責任があり、次の世代に伝える義務がある。昨年の総選挙と沖縄の人々の決意をいま全国民が学び、確信を持って「声」を出すべきではないか!「沈黙は不道徳」(Silence is immoral)というノーベル平和賞受賞団体の言葉を紹介して結びとしたい。 (文責 非核・いしかわ編集部)
◎本稿は非核の政府を求める石川の会も参加して1月22日、石川県教育会館で開かれた平和・民主団体合同〝新春のつどい〟における城北病院名誉院長 莇昭三さんの講演要旨です。