2016年 4月
「非核・平和の自治体づくり」
発行にあたって
非核・いしかわ編集長 中村昭一
〝戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない〟
『ユネスコ憲章』前文はこのように書き出し、先の大戦が世界の諸人民の間に疑惑と不信、無知と偏見による民主主義原理の否認、不平等の教義の広まりによって引き起こされたと規定しました。そして文化の普及と正義・自由・平和のための教育は人間の尊厳に欠くことはできないとし、「平和は人類の知的および精神的連帯の上に築かなければならない」と宣言したのです。
〝ここに私たちが皆に提出する問題、きびしく、恐ろしく、おそらく、そして避けることのできない問題がある――私たちは人類に絶滅をもたらすか、それとも人類が戦争を放棄するか?〟
『ラッセル・アインシュタイン宣言』は、核兵器使用についての無謀な議論によって戦争になってしまうことが全人類の脅威であると表明することに躊躇しませんでした。そして宣言に、技術の進歩すなわち原子爆弾の開発が人類の歴史を変えたと記し、核兵器廃絶・科学技術の平和利用を訴えたのです。
しかし残念ながら、今日の私たちはその成果によって未だに安らぎを得てはいません。これは〝核〟がある限り続くものです。
日本国憲法は第92条において地方自治の本旨に基づいてこれを定めるとし、法律によって地方自治の存在を侵害できないと定めています。ここでいう本旨とは、法律をもってしても侵害できない自治の核心部分を指し、国による統治に対立する側面を有するものです。自治とは〝自分のことは自分で処理すること〟(広辞苑)であることは自明です。
すなわち『非核自治体』を宣言することであれ、『平和首長会議』への参加であれ本来、国に対して何ら臆することなく意思表示できるものなのです。
この度、石川県内自治体の現況を調査・取材し、『非核・平和の自治体づくり』を発行することになりました。この冊子が、先の大戦の痛苦の体験から生まれた日本国民の〝不戦の誓い〟を新たにし、〝核兵器廃絶〟と〝人の心に平和の砦を築く〟という願いに沿ったものとなることを心から願うものです。
<表紙の写真説明>金沢市卯辰山玉兎ヶ丘にある「平和の子ら像」
金沢市卯辰山にある原爆犠牲者追悼碑「平和の子ら像」は、1998年8月9日に国、石川県、金沢市の助成と県内の自治体、被爆者、遺族、平和を願う多くの県民の基金により建立されました。以後、毎年夏に「平和の子ら像」前広場で、〝反核・平和おりづる市民のつどい(ピース・デイ)〟が開かれています。
目 次
「非核・平和の自治体づくり」2016年4月版発行にあたって 1
目 次 2
非核平和施策行政を訪ねて 3
・自治体所在地、電話番号
・非核平和宣言決議
・非核平和宣言の標柱又は記念碑、懸垂幕
・会報「非核・いしかわ」に掲載した取材記事
非核平和施策行政・取材先一覧 27
平和首長会議事務局・訪問記 28
・国内自治体の加盟状況、北信越各県の加盟状況、県内市町の加盟推移
・平和首長会議への加盟について 31
石川県内自治体2015年度平和事業アンケート集約結果 32
編集後記 34
編 集 後 記
この『非核・平和の自治体づくり』2016年4月版は、非核の政府を求める石川の会(以下、非核石川の会)が2012年から毎年実施している「平和事業に関する自治体アンケート」にもとづき、先駆的な非核・平和行政を進めている自治体への取材記事と首長との懇談記事を中心に編集したものです。併せて石川県下すべての自治体で採択された「非核平和宣言決議」とその標柱(七尾市、白山市、野々市市、津幡町、内灘町、志賀町、中能登町)、記念碑(金沢市)、懸垂幕(小松市)も掲載しました。
平和首長会議では、加盟都市の市民、NGO等と連携して、2020年までの核兵器廃絶をめざす「2020ビジョン」を掲げて全国自治体の100%加盟をめざしています。
非核石川の会が「平和事業に関する自治体アンケート」を開始した2012年では県内の加盟都市は5自治体でしたが、当会からの働きかけと平和首長会議からの呼びかけが相まって毎年加盟都市が増え、2016年4月現在では16自治体となり、未加盟は小松市、加賀市、能美市となりました(30頁参照)。
本書は、非核・平和行政の推進と草の根の平和運動の前進に寄与することを願って発行しました。非核・平和行政をになう自治体や市民の皆さまに広く活用していただけることを願っています。
本書発行にあたり、各自治体関係者、平和首長会議事務局の皆さんのご協力に厚くお礼申し上げます。
(事務局長 神田順一)
<裏表紙の写真説明>金沢市大乗寺丘陵公園にある「被爆アオギリ二世の木」
金沢市大乗寺丘陵公園にある「被爆アオギリ二世の木」は、2015年4月11日に被爆70周年慰霊事業として、石川県原爆被災者友の会が1945年8月6日広島に投下された原爆の戦火に焼かれながらも強く生き続けたアオギリの二世を植樹したものです。
非核の政府を求める石川の会は、会報「非核・いしかわ」第213号(2016年4月20日付)を発行しました。サイドメニューの会報「非核・いしかわ」、「絵手紙」も最新情報を追加しました。
●サイドメニューの「非核・いしかわ」紹介をクリックすると、A4判にリニューアルした第150号(2011年1月20日付)以降のバックナンバーをすべて閲覧できます。
●サイドメニューの「絵手紙」をクリックすると、第159号(2011年10月20日付)から掲載している金沢医療生協絵手紙班の作品をすべて閲覧できます。
穴水町が平和首長会議に加盟し、県内自治体の100%加盟が目前に!
平和首長会議ホームページの4月1日付新着情報に石川県穴水町(石川宣雄町長)など「新たに32自治体が平和首長会議のメンバーに加わりました。これにより、加盟都市数は世界161か国・地域7,028都市となりました」と掲載されました。
平和首長会議への県内加盟自治体は2008年の野々市町から始まり、毎年増加して4月1日現在で16か所(加入率84.2%)となり、未加盟は加賀市、小松市、能美市の三市になりました。【別表参照】
石川県各自治体の平和首長会議加盟の推移 | ||
(2016年4月1日現在) | ||
加盟年 | 自治体名 | 累計 |
2008年 | 野々市市(注) | 1 |
2009年 | 内灘町、金沢市 | 3 |
2010年 | 珠洲市 | 4 |
2011年 | 七尾市 | 5 |
2012年 | かほく市 | 6 |
2013年 | 川北町、志賀町、中能登町 | 9 |
2014年 | 津幡町 | 10 |
2015年 | 白山市、羽咋市、宝達志水町、能登町、輪島市 | 15 |
2016年 | 穴水町 | 16 |
(注)野々市町は2011年11月に野々市市に移行した | ||
<未加盟自治体>小松市、加賀市、能美市 |
平和首長会議への国内自治体の加入率は93%です。平和首長会議では、より多くの自治体が加盟することにより、平和を願い、核兵器廃絶を求める機運を高めることができると全国自治体の100%加盟をめざしています。このため未加盟自治体には繰り返し加盟のお願い文を郵送し、重点自治体には直接訪問しています。
非核石川の会から2月19日、広島平和文化センター(平和首長会議事務局)を訪問した際、応対いただいた担当課長から「1月28日、29日に国際推進部部長が加賀市、小松市、能美市を訪問し、各総務部長と懇談して、三市揃って来年度加盟の意向を確認できた」との報告がありました。
県内自治体の100%加盟が目前になりました。非核石川の会では本年も5月に「平和事業に関する自治体アンケート」を実施し、県内自治体の平和施策の拡充と平和首長会議への加盟を働きかけていきます。