核兵器禁止条約の国連交渉会議 本会代表世話人に聞く(朝日新聞)

 朝日新聞4月19日付朝刊に核兵器禁止条約の制定に向けた国連交渉会議に日本政府が不参加を表明したことにつき、本会代表世話人の井上英夫氏へのインタビュー記事が大きく掲載されました。本会ホームページに紹介します。

 

 <いま聞きたい>

核禁止条約交渉 日本参加せず 

被爆国 責任を果たすべき

         非核の政府を求める石川の会代表世話人

             井上英夫さん

 

 核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の制定に向けた最初の交渉会議が3月、ニューヨークの国連本部で開かれた。条約に反対する核保有国・米国の「核の傘」の下にある日本は不参加を表明した。北朝鮮が核開発を強めるなか、唯一の戦争被爆国日本の立ち位置は重要だ。国内外で核兵器廃絶に向けた運動をおこなう「非核の政府を求める石川の会」代表世話人の井上英夫さん(69)に条約の意義について聞いた。

 

――核兵器禁止条約についてどのように考えますか

 人類は第2次世界大戦の悲惨さを体験し、戦後国連は世界の指針として大きなものに「平和」と「人権」を掲げました。人権保障は平和でないと実現できず、人権を徹底的に保障してこそ平和だといえる。単に戦争やテロがないという状態ではありません。日本も憲法が保障する「平和的生存権」を掲げ、努力をしてきた。こうした人類の進歩を土台にしながら次のステップを考えるべきです。

 核兵器の禁止も、条約ではなく軍縮でという議論があるが、方向としては軍縮をしながら禁止を明確にする形ではっきりと打ち出すべきです。国連も、戦前と異なり大きな力を果たすことができる。核保有国も国際的な条約となれば無視できません。

――米国は条約をつくることは現実的ではないと反論しています

 トランプ大統領は物事を考えるとき、常に「現実」を優先します。核兵器禁止条約も北朝鮮が同意する可能性がないとして、条約に対して否定と軽視の態度をとる。

 でも現実論だけでは人類は進歩しません。非核の条約を作ろうと世界115カ国を超える国が理想を求めて交渉に参加している。それを形にしていくのが政治家の仕事だと思う。

――北朝鮮が核の開発を進め、「核抑止力論」が強いです

 北朝鮮は通常の兵器では核保有国に対抗できないため、核兵器を所有する。死にものぐるいで核武装しようとする国に対して、どんな兵器を対置しても実は抑止力にはならない。

 「抑止力論」は核廃絶の最大の関門です。非核の政府を求める石川の会で、2010年と2015年にニューヨークのセントラルパークで平和行動として核兵器廃止のための署名活動をしました。そこで、クレームを言う人たちは必ず「核兵器を持たないと攻められる」と言う。でもディスカッションすると「人は殺さないほうがよい、暴力もよくない」。こちらが「核兵器は多くの人を殺す。なくしていくほうがよいのでは」というと少し納得します。

 国と国との関係で物事を考えると「国を守るため」となる。でもその土台は国民を守ることです。一人ひとりが個人のレベルで考えていくしかない。「テロにはテロ」という暴力主義ではなく、非暴力主義が核廃絶へは遠回りのようだが、実は一番の近道だと思う。

――日本は交渉に参加しません

 情けない。反対なら交渉会議に参加して、堂々と主張し議論すればいい。アメリカの顔色ばかりうかがっていたら、同盟国ではなく従属国ですよ。

 被爆を経験した日本は被爆者や国民、世界に対してきちんと責任の果たし方を考えるべきです。仮に、核兵器禁止条約の交渉会議に日本の政府が参加して、リーダーシップを発揮したら、世界の人々はどれだけ勇気づけられるか。

――非核の政府を求める石川の会の活動は

 核をなくし、兵器、軍事的な思想を無力化していく。地方政治を変えながら国や中央政府を変えていくことです。会報「非核・いしかわ」の発行や、自治体が核兵器廃絶の意志を示す非核宣言を推進する運動。核兵器の廃絶に世界の都市が連携して取り組む平和首長会議には、県内の全市町が加盟しました。原爆写真パネル展や学校の修学旅行で広島や長崎に行くなど、子どもたちへの平和教育、平和のための行動に力を入れてもらう。

 核兵器禁止条約は国同士の取り決めです。それをどのように生かすかは、国民一人ひとりの問題なのです。

(聞き手 須藤佳代子)

【略歴】

いのうえ・ひでお 1947年埼玉県生まれ。早稲田大学法学研究科博士課程単位取得退学、茨城大学を経て金沢大学に就任、2013年に退職。専門は社会保障法、福祉政策論、人権論。金沢大学名誉教授、現在佛教大学客員教授を務める