2017年 7月

核兵器廃絶に向けて 核兵器禁止条約を国連で採択!

代表世話人 五十嵐正博

核兵器禁止条約の採択と道のり

 2017年7月7日、ニューヨークの国連本部において核兵器禁止条約が採択された。国連の現加盟国数は193、会議には124が参加し、賛成122、反対1、棄権1であった。広島・長崎への原爆投下から72年、被爆者の、そして核兵器廃絶を訴えてきた人々の願いがかなえられた瞬間であった。同日、ハンブルクに集った核兵器国とその核の傘に従属するG20首脳の多くは、ニューヨークでの成り行きを無視した。

 それにしても長い道のりであった。国連憲章が採択されたのが1945年6月26日、アメリカによる最初の核実験が行われる20日前のことであった。国連憲章は、核兵器という人類の滅亡につながる大量破壊兵器の存在を知らなかった。しかし、憲章採択後に広島・長崎に原爆が投下され、原爆の脅威が広く認識されるようになったため、国連総会は、最初の決議で原子力委員会を設置し、「すべての核兵器および大量破壊兵器の廃絶」を目標として掲げることを決定した。

 その後、第五福竜丸事件は「死の灰」の恐怖を認識させ、核実験停止を求める運動は、やがて部分的核実験禁止条約(1963年)、包括的核実験禁止条約(1996年、未発効)に結びつく。他方、核兵器国の数が増加し、核戦争の可能性が増大するとの懸念が生まれ、核不拡散条約(1968年)が採択された。核不拡散条約6条は、締約国に核軍縮のための誠実な交渉義務を課すが、一向に核軍縮が進まない(進めようともしない)ことに、非核兵器国の多く、またNGOなどの不満が増大した。「核兵器使用の合法性」について、国際司法裁判所の意見を求める運動を担ったのはNGOであり、そうした運動が核不拡散条約の再検討会議において核兵器廃絶を求める声の高まりを生み、核兵器禁止条約の採択につながったのである。

核兵器禁止条約の特徴

非人道性とヒバクシャの視点

 条約の特徴は、核兵器の非人道性を強調するとともに、核兵器は人類に被害をもたらす〝絶対悪〟だというヒバクシャの視点を取り入れたことである。

 条約は前文と20か条からなる。前文において、この条約の締約国は、「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道上の帰結を深く憂慮し、核兵器を完全に廃絶する必然的な必要、それは核兵器がいかなる状況においても決して再び使用されないことを保証する唯一の方法であり続けることを認識」し、「核兵器の壊滅的な帰結」は、人類の生存、環境、食料の安全および現在と将来の世代の健康に重大な影響を与え、放射線の女性・少女の健康に悪影響を与えることを認識する。「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道上の帰結」の文言は、2010年の核不拡散条約再検討会議以来しばしば確認されてきた。

 この条約の締約国は、「核兵器の使用の被害者(ヒバクシャ)および核兵器の実験により影響を受けた者にもたらされる容認しがたい苦痛と被害に留意し」、人道の諸原則の推進における公共の良心の役割のために国連やヒバクシャによりなされた努力を認識する。前者は、「被爆者が歩んだ苦難の歴史から核兵器の非人道性を際立たせるため」と評価されている。

 核兵器あるいはその他の核爆発装置の開発、実験、製造、生産、獲得、保有、貯蔵、移譲、受領などを包括的に禁止する(1条)。「核兵器の威嚇の禁止」は、核抑止力を否定するものとして、7月3日の「議長最終案」で初めて提示された画期的な規定である。

 核兵器の使用または実験により影響を受けた被害者に対する医療やリハビリなどの支援、汚染された地域の環境回復義務も規定された(6条)。

日本政府の態度

 唯一の被爆国日本は、3月の交渉会議初日に不参加を宣言、岸田外相は「核兵器国と非核兵器国の対立をいっそう深めるという意味で逆効果にもなりかねない」とし、あたかも非核兵器国が核兵器廃絶を妨げているような暴言を吐いた。高見沢軍縮大使は、核保有国の参加が見込めないことから「実際に核保有国の核兵器が一つも減らなくては意味がない」などと述べて、会議の席を立った。高見沢氏は、安保法制懇において、事務方の一翼を担い、「集団的自衛権の行使は地球の裏側まで及ぶ」と述べた人物である。

 こうして、日本は核兵器国と非核兵器国の「橋渡し」になるどころか、非核兵器国、核廃絶を願う人たちの信頼を完全に失い、アメリカの属国であることを国連の場で宣言したのであった。

 岸田外相の発言は、1996年国際司法裁判所の「核兵器使用の合法性」に関する勧告的意見に逆らうものである。裁判所は、長期的には、核兵器などの破壊的な兵器の法的地位に関して意見の対立が続けば、国際法、それが律するべき国際秩序の安定性が、悪影響を被ることになるのは必至であるとし、完全な軍縮の早期達成こそが必要であると呼び掛けたのであった。

核兵器廃絶を目指して

「非核の政府を求める会」の重要な役割

 国際社会は大きく変化してきた。それは、国際社会の民主化の進展であり、大国の横暴に異議を唱える国、市民の声の高まりが導いたものである。そうした進展が、核兵器を「核抑止力」を含めて全面的に違法化し、核保有国とその同盟国を追い詰めてきたのだ。核兵器の全面的な廃絶を達成するために、国内外における世論の圧力をより強めていかなければならない。「非核の政府を求める会」の役割はますます重要である。

 非核の政府を求める石川の会は、会報「非核・いしかわ」第228号(2017年7月20日付)を発行しました。サイドメニューの会報「非核・いしかわ」、「絵手紙」も最新情報を追加しました。

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