2019年 4月

 核兵器禁止条約と南アフリカ 

非暴力・非戦の現状と課題

代表世話人 井上英夫

 国連ビルにあるネルソン・マンデラ氏の立像

 本紙1月号に、非暴力の観点から「人類の希望 マンデラと南アフリカ」という訪問記を掲載しました。今回は、NY国連ビルから非暴力・非戦とりわけ核廃絶について最近の動きをお知らせしましょう。

南アフリカが条約批准

 2月25日、南アフリカ共和国が核兵器禁止条約を批准しました。一時は独自の核兵器開発を推し進め、その後核兵器反対に転じた唯一の国が、核のない世界に向けた重要な一歩を踏み出したのです。

 条約は50か国が批准すれば発効します。そして4月11日、新たにパナマが批准し、23か国となりました。

 

 条約は2017年七月七日、123か国によって採択されました。しかし、全核保有国とアメリカの核の傘の下にあるカナダドイツなどNATO加盟国や日本、オーストラリア韓国などが「不参加」でした。反対票はオランダ、棄権国はシンガポールだけでした。日本等が、反対ではなく会議に参加しないという姑息な手段をとったのは、全世界の核兵器禁止・廃絶の声に圧迫されてのことでしょう。

 ちょうどこの日、私たち日本高齢期運動サポートセンターNGO代表団は一階下の会議場で高齢者人権条約制定会議に参加していました。人権保障と平和・核廃絶問題が表裏一体であることを実感でき、感動的な一日でした。そして、今日4月17日も国連ビルでネルソン・マンデラさんの歓迎を受けながら、条約制定運動に取り組んでいます。なお、条約の推進には核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の貢献が大きく、2017年10月にノーベル平和賞を受賞しました。

 核兵器の廃絶

 南アフリカ共和国からの教訓

 前文では被爆者(核兵器使用と核実験)の容認しがたい苦難と損害に留意しています。その目的は、「核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用及び威嚇としての使用の禁止ならびにその廃絶」であり、まさに全面的な核兵器禁止・廃絶となっています。原発は除外されていますが、別の機会に議論しましょう。

 

 ズマ前南アフリカ大統領は、2017年9月の核兵器禁止条約署名式において、大量破壊兵器に安全な使用法などないという確信に基づいて、核兵器を世界、そして人類からなくすため、すべての加盟国に対して、条約批准を声高に訴えました。こうした発言を大統領ができるのも、アパルトヘイト廃止とともに、核兵器の廃棄を自主的に成し遂げた初めての国だからです。

  南アフリカは、1973年に正式に核兵器計画を始め、1982年頃、最初の核爆発装置を製造します。1989年、この時点で55kgの高濃縮ウランを含む核爆弾6発を所持していましたが、1990年2月、最後の白人大統領デクラークが、核兵器放棄の決定をしました。それは、マンデラが刑務所から釈放され、アフリカ国民会議(ANC)等が合法化された直後のことでした。そして、翌年1991年、核不拡散条約(NPT)に加盟しました。その後、核廃絶への道を歩み、核武装国の核抑止論に立ち向かってきたのです。1998年の国連総会でマンデラ元大統領は次のような演説をしています。

「我々は問わなければなりません。非道で恐ろしい大量破壊兵器を拒むことなく、その正当性を主張し続ける人々には無知に聞こえるのかもしれませんが、『なぜそんなものが必要なのか』と。実際のところ、冷戦時代の惰性と自国の優位性を固持するためだけの核兵器への執着が結果的に何をもたらすのか、満足のいく形で合理的に説明することなど誰にもできないのです」。

 こうして南アフリカは、2012年以降、核兵器廃絶への人道的イニシアチブをとる中核的存在となりました。それが核兵器を禁止する国連条約を求める運動へと発展し、2017年の核兵器禁止条約採択に繋がりました。

 ICANも指摘するように、南アフリカは、核放棄によって核不拡散問題に関する世界的な発言力を確保したわけですが、核兵器禁止条約批准にはさらに大きな意味があり、「各国が安心して武装解除し、それを継続できるような適切な環境を作り上げることの重要性」を示しています。(https://twitter.com/nuclearban_jp 2019年2月25日)

          国連・非暴力の象徴

 この点は、国連の場においても確認されています。

 2018年9月24日、 ニューヨークの国連本部におけるマンデラ生誕100周年を記念した「ネルソン・マンデラ平和サミット」における政治宣言は、次のように国家、政府の長、代表の決意を語っています。

(1)ネルソン・マンデラ氏の謙遜・寛容・慈悲の資質、彼の価値観及び慈悲の献身に敬意を表す。(2) 公正、平和、豊かで、包摂的かつ公平な世界を構築するための努力を倍増すること及び相互尊重、寛容、理解及び和解を示すことにコミットする。(3) 紛争は予防外交よりもあらゆる面において損失が大きいという議論の余地のない事実を認識する。(4) 紛争予防、根本原因への対処、法の支配の強化を通じて、「平和の持続」への包括的アプローチの重要性を強調する。(5) 核兵器計画を一方的に廃棄した南アフリカが示した例を歓迎し、核兵器廃絶を支持したネルソン・マンデラ氏の確固たる願いを想起する。

 マンデラとオバマ 

 二人の黒人大統領

 オバマとマンデラ、2人とも自国で史上初の黒人大統領に就任しています。バラク・オバマ前米大統領は2018年7月17日、南アフリカ・ヨハネスブルクでの生誕100年記念講演で世界の人々とりわけ若者に呼びかけました。

 希望を失わないこと、信じ続けること、前進し続けること、築き続けること、声を上げ続けること。世代は皆それぞれ世界を刷新する機会が与えられている、と。

「マンデラ氏は、若者たちが目覚めれば、圧制の塔を打ち倒し自由の旗を掲げる力があると言った」とオバマは指摘し、「今こそ目覚めるときだ」と講演を聞いている若者たちに「情熱を燃やす」よう呼びかけたのです。

 最後に、マンデラの言葉をもう一つ紹介しておきましょう。

「もし、あなたが敵と平和を築きたいのであれば、あなたはその敵と一緒に話し合わなければいけません。それから、敵はあなたのパートナーとなることでしょう。」

 日本国憲法の前文も、日本国民が、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすること」と「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと」決意したこと、そして「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ平和のうちに生存する権利」すなわち平和的生存権を有することを確認しています。日本国憲法と南アフリカ、そして「非核の政府を求める会」は、非暴力と国家による暴力の否定=非戦、人間観を共有しているのです。

 今こそ、南アフリカの経験を活かし、日本国憲法を世界に広め、核兵器禁止条約を批准し、核廃絶へリーダーシップを発揮するよう安倍政権に迫る、「非核の政府を求める会」の役割はますます大きいと思います。

 

 非核の政府を求める石川の会は、会報「非核・いしかわ」第249号(2019年4月20日付)を発行しました。サイドメニューの会報「非核・いしかわ」、「絵手紙」も最新情報を追加しました。

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