非核・平和の情報

 2017年7月7日に採択され、同年9月20日に調印・批准の受付が始まった核兵器禁止条約は、「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」 に合わせて2018年9月26日に国連本部で行われた第2回調印式で、新たに7か国(アンティグア・バーブーダ、ベナン、ブルネイ、ギニアビサウ、ミャンマー、セーシェル、東ティモール)が調印、4か国(ガンビア、サモア、サンマリノ、ヴァヌアツ)が批准書を国連事務総長に寄託し、調印は69か国、批准は19か国になりました。翌27日、新たに2か国(アンゴラ、セントルシア)が調印書を国連に寄託し、調印は69か国になりました。

 核兵器禁止条約は、50か国目の批准書が国連事務総長に寄託されてから90日後に発効します。

【批准国】ガイアナ、タイ、バチカン、メキシコ、キューバ、パレスチナ、ベネズエラ、パラオ、オーストリア、ベトナム、コスタリカ、ニカラグア、ウルグアイ、ニュージーランド、※クック諸島、ガンビア、サモア、サンマリノ、ヴァヌアツ

※クック諸島は、同条約に調印せずに加入書を国連に寄託しました。加入は批准と同じ法的効力を持ちます。

【出典】核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のウェブサイトで条約の調印・批准状況が分かります。随時更新される予定。

 http://www.icanw.org/status-of-the-treaty-on-the-prohibition-of-nuclear-weapons/

2017年非核の政府を求める会シンポジウム(12月9日、日本大学理学部会議室)

   非核の政府を求める会主催の「核兵器禁止条約の非核の政府を語る」シンポジウムが2017年12月9日(13:00-17:00)、御茶ノ水の日本大学理学部会議室にて開催された。

 最初に主催者を代表して野口邦和代表世話人の挨拶の後、駒場忠親常任世話人の司会でシンポジウムが進行した。まず、大阪女学院大学大学院教授の黒澤満氏は、「核兵器禁止条約は、この間の核軍縮への人道的アプローチと、多国間核軍縮が進まない、CTBTが進展しないなど核保有国がNPT6条を守らないことに対する非核兵器国のフラストレーションの高まりを背景にして採択されたものである。ただ、核兵器国の抵抗も強く、今後の課題として、核兵器に悪の烙印を押す(Sigmatize)、核兵器の非正当化をすすめる(Delegitimize)という運動が必要だ」と話された。

 日本原水協代表理事の高草木博氏は、「核兵器禁止条約の最大の成果は、国連憲章や国連総会第1号決議などとの法的ギャップを埋めたことにある。国連総会での『多国間核軍縮交渉の前進決議』は125カ国が賛成(禁止条約の採択は122カ国)した。反対は39カ国で、NATO加盟国プラス日本や韓国やオーストラリアだった。日本決議は、12月5日の国連総会で第1委員会の決議144カ国から156カ国に増えたと外務省は強調しているが、この決議には大きな問題がある。この日本決議についてスウェーデンとスイスが、投票理由説明という形で発言し、自分たちは賛成票を投じるが、この決議案には重大な懸念があり議事録にとどめざるを得ないとして、いくつかの点を指摘した。両国は日本決議の中の、NPTの合意文書である『核兵器の廃絶を達成するという核保有国の明白な任務を再確認する』という内容を『核保有国のNPT条約の完全な履行という任務を再確認する』という文言に変えた点、さらに、『核兵器のあらゆる使用の壊滅的な人道上の結末への深い懸念』という、あらゆる(any use)のanyを削りuseにしてしまった点などを指摘し、これまでのNPTの合意レベルを低下させてはいけないと釘を刺した。日本政府は、核兵器国と非核兵器国との橋渡しをするといいながら、核兵器国の代弁者としての役割を果たしている」と日本政府の立場を批判した。

 東京慈恵会医科大学教授の小澤隆一氏が特別発言として「安倍流北朝鮮の脅威・9条改憲論を斬る」というテーマで報告し、「安倍政権が、ことさら北朝鮮の脅威を振りまき、『国難』と呼んで、国民に不安を募らせ、一気に9条の改悪を行い、さらには、アメリカの核の傘に頼ることの危険性」を指摘された。

 日本弁護士連合会の核廃絶PT所属・憲法問題対策本部委員の森和恵氏が報告した。森氏は、まず今年の3月に参加したマーシャル諸島視察と国連核兵器禁止条約交渉会議の視察の報告をした後に核兵器禁止条約の中身を説明、今後の課題として「核兵器禁止条約への署名と批准を働きかけること、日本での非核三原則の法制化を行うことの重要性」を述べた。

 非核の政府の会の常任世話人で日本共産党の衆議院議員である笠井亮氏が発言し、「この核兵器禁止条約は、核兵器を史上初めて『違法化』したものであり、国際政治の主役の交替であり、各国政府と市民社会のコラボの成果であると強調した。それに対し、かつての植民地国が大国の言いなりにならなくなってきている中で、アメリカ言いなりの被爆国日本の立場を批判、日本政府の主張は、ことごとく破綻しており、9条をもつ唯一の戦争被爆国日本が条約に参加することによって核兵器の廃絶への展望が開く」と強調した。

 最後に特別発言として、「被爆者証言の世界化ネットワーク」の長谷邦彦氏が、被爆証言を多国語に翻訳している活動を紹介。現在、101の被爆証言を翻訳したことを報告された。長谷氏は、「核兵器の非人道性は、ヒバクシャが長らく訴えてきたものであり、日本人だけが核兵器の廃絶を訴えても国際世論を動かすことはできない。世界中の人たちに被爆の実相を知ってもらうことが大切である」と強調された。

 シンポジストの報告の後、フロアからいくつかの質問、意見があり、最後にシンポジストのまとめの報告があり、非核の政府の会の常任世話人の高橋和枝氏のまとめにて閉会した。

(報告者:非核の政府を求める会常任世話人 原和人)

◇講演要旨◇

ヒバクシャ国際署名キャンペーンイベントin金沢

核なき未来はぼくらがつくる!

ヒバクシャ国際署名キャンペーンリーダー         

林田  光弘

 

 10月15日(日)、金沢市松ヶ枝福祉館で「ヒバクシャ国際署名キャンペーンイベントin金沢」が開催されました。最初に今年六月に完成したDVD「この空を見上げて~石川・被爆者たちの証言」の第1部(38分)を上映した後に、長崎出身の被爆三世で国際署名キャンペーンリーダーである林田光弘さんの講演がありました。

   主催は反核・平和おりづる市民のつどい実行委員会。以下は林田さんのお話しの要旨です。

 

           

 二つの画期的な出来事

 この間に二つの画期的な出来事がありました。一つは7月7日に国連で「核兵器禁止条約」が採択されたこと。もう一つはICANがノーベル平和賞を受賞したことです。ICANとは、核兵器禁止条約をつくるために結ばれた世界中の500余の団体のネットワークのことです。ノーベル平和賞というのは政治的な賞で、かつてオバマ大統領が受賞したのも核兵器廃絶に向けての期待を込めてのものでした。この二つの出来事に共通しているのは被爆者の体験がエネルギーになって実現したということです。私は、これらのことを通じてキャンペーンメンバーに対して、次は被爆者に核廃絶を届けるのだという宿題をもらったと受け止めました。

 事態を正確に捉えるために詳しく見ていきます。

 被爆者の四つの概念

 被爆者というのは法的な概念です。特定地域の四つの分類(直爆、入市被爆、介護被爆、胎内被爆)の条件を満たす者となっています。被爆者の数は2017年3月現在で164,621人となっています。1980年がピークで372,264人でした。被爆者であるということで差別されることを恐れて名乗りをしていない人や被爆者手帳をとっていない人がかなりの数います。

 今日までが被爆体験

 被爆体験と言いますが、被爆者にとっては1945年8月6日と9日から今日までが被爆体験であるということです。健康上、精神上、社会的にも大変な体験が今も続いているということです。

 また健康手当など被爆者援護の施策は色々ありますが障害者などと同じ社会福祉の制度です。国家が行った戦争によって被害を被ったことへの「国家補償」ではないということです。それから在外被爆者、台湾や朝鮮半島(特に帰国運動当時はより豊かであった北朝鮮の地域に帰った人の方が多かった)など戦前は日本の植民地であった地域に住んでいるひとが除外されていた事実もあります。更にABCC(放射線影響研究所)の問題があります。被爆者はここに連れていかれてデータだけ取られました。治療をすればデータがとれないから肝心の治療はしてもらえなかったわけです。これらが被爆者体験という事実です。

 核兵器は大量破壊兵器

 核兵器について述べます。効果が一定の対象に限定できないという意味で大量破壊兵器とされています。大量破壊兵器で最大、最悪のものが核兵器ですが、現在の核兵器は広島・長崎で使用されたものの3,300倍の破壊力を持ち、9か国で14,900発保有しています。1970年に発効したNPT体制とは、当時の既保有国5か国を除いて他国の保有を許さないというものでした。5年ごとに再検討会議を開いて効果を検証して来ましたが、その後4か国が条約から離脱し、拡大されてしまいました。そこで2010年に赤十字国際委員会は核兵器の非人道性に着目して総裁声明を出しました。さっきの被爆者の四つの類型のうち「介護被爆者」の存在は、医療者にとっては被爆者の救護に当たって敵であるか味方であるか、勝者か敗者かは関係ありません。この核兵器の非人道性の考え方に基づいて再検討会議の間に国際会議が開かれ核兵器禁止条約に繋がりました。

 何をなすべきか?

 では、何をなすべきかです。日本政府は条約交渉会議に参加しませんでした。採択後も署名しないと表明しました。日本政府は国連総会に毎年「核全廃宣言」を出して多数の賛同を得てきましたが、核兵器禁止条約が採択された今年は世界から相手にされていません。私たちは「核の傘」に向き合うべきです。核保有国とその同盟国の中で、唯一の戦争被爆国である日本政府の動向は重要です。日本政府が橋渡しの役割を本当に果たせば、大きく変わる可能性があります。例えばオバマがやろうとした「核の先制使用はしないという宣言をする」こと、「全ての核実験を禁止すること」など現実的対応を引き出すことも可能です。ヒバクシャ国際署名を推進しましょう。

 署名は対話のためのツールです。日本の署名の到達は5,154,866筆まで来ました。ヒバクシャ国際署名に賛同して署名をした自治体の首長は867あります。全国の自治体数の過半数です。核保有国と我が国を含めた多くの同盟国の参加を求め、核抑止力による安全保障政策を変えさせる運動を一層強めなければなりません。核廃絶を「夢」にしないために。

◎講演会終了後、近江町市場前でヒバクシャ国際署名を呼びかける宣伝行動を20名の参加で行いました。短時間でしたが40筆を超える署名が集まりました。

第22回IPPNWヨーク大会の参加報告

 核戦争に反核する医師の会                                                代表世話人 原   和人

 2017年9月4日から6日まで、イギリスのヨークで開催されたIPPNWヨーク大会に参加しました。このヨーク大会は、前回のカザフスタンでの大会後、3年ぶりに開催されたものです。この大会は、IPPNWだけではなく、イギリスの平和関係のNGOが共同し、特に、MEDACTという団体が中心になって準備されました。この大会には、世界37カ国から約500人が参加したようです。

 反核医師の会として、今回も会員に参加を呼びかけ、会員23人、家族2人、事務局3人、通訳2人、添乗員1人の合計31人が参加しました。

 今回の大会は、今年の7月7日の核兵器禁止条約(以下核禁条約)の採択後という状況の下で、その中心になってきたIPPNWとして、その成果を確認するとともに、核兵器の廃絶に向けてこれからどのような取り組みをしていくのかということが論議されました。

 私自身、IPPNWの総会に参加するのは、2004年の北京大会、2010年のスイスのバーゼル大会、2012年の広島大会、2014年のカザフスタンのアスタナ大会と今回で5回目ですが、2010年のバーゼルでの大会の印象が強く残っています。

 2010年の大会は、その年の5月に開催されたNPT再検討会議の直後に開催されました。その時採択されたNPTの会議の最終文書では「核兵器の完全廃絶を実現するという核兵器国の明確な約束を再確認する」と明記されました。バーゼルの大会では、その当時、核禁条約に積極的に取り組んでいたスイスの外相が演説し、さらに、イギリスのアクロニム軍縮外交研究所所長で、長年、平和運動にかかわってきたRebecca E Johnsonさんが、「NWC(核兵器禁止条約)が『非現実的だ』とか、『未熟だ』とか、『私の生きている間に』とかということではなく、今、必要なのだ。今ここで挑戦する課題だ。」と訴えたことが、今でも思い出されます。

 その後、「人道上の誓約」という声明が出され、オスロからナヤリット、ウィーンに続く「核兵器の人道的な結末」の会議が開催されます。その成果の下に、今回、核禁条約が採択されたのです。2013年のオスロの会議で非政府組織の取りまとめ役を果たしたICAN事務局は、この会議を列車の旅に例えて、以下のような声明を発表しました。「今、我々は始発駅のオスロのプラットホームを離れたのである。日ならずして、われわれはメキシコに到着するであろう。その先には、一連の停車駅が待ち受けているであろう。道すがら、下車する政府もあるであろうし、乗り込んでくる他の政府もあるだろう。しかし、列車の旅は弾みをつけながら進行するであろう。それを支えるのは、核爆発による絶滅の脅威から解き放たれた、より平和な未来を実現するという世界の人々の圧倒的な意志である。終着駅への到着は、人道上、緊急に必要とされている。」

 今年の7月の国連での核禁条約の採択は、終着駅に向けての旅に大きな弾みをもたらしました。この列車には122カ国が乗り込んでいます。今月の20日から各国の署名が始まります。

 ヨークの大会では、どういう力によって核禁条約の採択に結びついたのかということが総括されました。 第1は、核兵器を核抑止力という安全保障の視点ではなく、いったん核戦争が起こったら、多くの人たちが苦しみ、全面的な核戦争になれば人類が滅亡してしまうかもしれないという人道上の結末の視点で論議されたことです。この論議には、ヒロシマ・ナガサキのヒバクシャが「自分たちの苦しみを二度と繰り返して欲しくない」と自らの体験を訴えたこと、また、アメリカのPSR(IPPNWのアメリカ支部)の医師たちがまとめた「核の飢餓」という核戦争による影響の予測が大きな影響を与えました。第2に、国という組織だけではなく、IPPNWなどが参加するICANなどの市民社会が参加したことです。市民社会は、国際的なアライアンス(同盟)を結んで、共同して運動をすすめました。第3に、アフリカや中南米の国々が一つにまとまって世界を動かし始めたということです。中南米のCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)33カ国、そして、50カ国以上の国々が参加するアフリカ連合が大きな役割を果たしました。象徴的だったのは、3月の前半の交渉会議の時に、国連の中で非核兵器国が議論をしている中で、国連の外でアメリカ、イギリス、フランスなどの核兵器国が、「我々は現実的にならなければならない」と声明を出したことです。

 IPPNWのバーゼル大会の後、レベッカ・ジョンソンさんの訴えに感化された私が、ある会議で「核禁条約は国連加盟国の多数で採択することができる」と報告したのですが、日本の反核運動を牽引してきた先輩たちから、核兵器国の参加がなければ核禁条約はできないと指摘されました。確かに、核兵器をなくするためには核兵器国の参加が必要ですが、条約を作ることは可能です。今回、明らかになったように条約になることによって、核兵器の使用は非人道的に許されないということだけではなく、核兵器による脅しも違法であると、核兵器に「悪の烙印」を押したのです。今までの常任理事会を中心とする大国からの支配から、多数の国連加盟国による民主主義の力で世界の政治が動くという新しい時代が到来しました。

 さて、列車が核兵器のない世界という終着駅に着くためには、何が必要なのか。これまで取り組んできたように、核兵器の非人道性を訴えていくこと、市民社会の参加、非核兵器国の力を大きくするの3つが大切ということが強調されました。

 特に、戦争による唯一の核被爆国である日本国政府が、この核禁条約に署名し、批准することが世界の人々に大きな勇気を与えます。私たちの運動も、ヒバクシャ署名に取り組み、日本国政府ならびに国際社会に向けて核兵器の廃絶を訴えていくことが大切だと感じました。

(非核の政府を求める会常任世話人)

核兵器廃絶に向けて 核兵器禁止条約を国連で採択!

代表世話人 五十嵐正博

核兵器禁止条約の採択と道のり

 2017年7月7日、ニューヨークの国連本部において核兵器禁止条約が採択された。国連の現加盟国数は193、会議には124が参加し、賛成122、反対1、棄権1であった。広島・長崎への原爆投下から72年、被爆者の、そして核兵器廃絶を訴えてきた人々の願いがかなえられた瞬間であった。同日、ハンブルクに集った核兵器国とその核の傘に従属するG20首脳の多くは、ニューヨークでの成り行きを無視した。

 それにしても長い道のりであった。国連憲章が採択されたのが1945年6月26日、アメリカによる最初の核実験が行われる20日前のことであった。国連憲章は、核兵器という人類の滅亡につながる大量破壊兵器の存在を知らなかった。しかし、憲章採択後に広島・長崎に原爆が投下され、原爆の脅威が広く認識されるようになったため、国連総会は、最初の決議で原子力委員会を設置し、「すべての核兵器および大量破壊兵器の廃絶」を目標として掲げることを決定した。

 その後、第五福竜丸事件は「死の灰」の恐怖を認識させ、核実験停止を求める運動は、やがて部分的核実験禁止条約(1963年)、包括的核実験禁止条約(1996年、未発効)に結びつく。他方、核兵器国の数が増加し、核戦争の可能性が増大するとの懸念が生まれ、核不拡散条約(1968年)が採択された。核不拡散条約6条は、締約国に核軍縮のための誠実な交渉義務を課すが、一向に核軍縮が進まない(進めようともしない)ことに、非核兵器国の多く、またNGOなどの不満が増大した。「核兵器使用の合法性」について、国際司法裁判所の意見を求める運動を担ったのはNGOであり、そうした運動が核不拡散条約の再検討会議において核兵器廃絶を求める声の高まりを生み、核兵器禁止条約の採択につながったのである。

核兵器禁止条約の特徴

非人道性とヒバクシャの視点

 条約の特徴は、核兵器の非人道性を強調するとともに、核兵器は人類に被害をもたらす〝絶対悪〟だというヒバクシャの視点を取り入れたことである。

 条約は前文と20か条からなる。前文において、この条約の締約国は、「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道上の帰結を深く憂慮し、核兵器を完全に廃絶する必然的な必要、それは核兵器がいかなる状況においても決して再び使用されないことを保証する唯一の方法であり続けることを認識」し、「核兵器の壊滅的な帰結」は、人類の生存、環境、食料の安全および現在と将来の世代の健康に重大な影響を与え、放射線の女性・少女の健康に悪影響を与えることを認識する。「核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道上の帰結」の文言は、2010年の核不拡散条約再検討会議以来しばしば確認されてきた。

 この条約の締約国は、「核兵器の使用の被害者(ヒバクシャ)および核兵器の実験により影響を受けた者にもたらされる容認しがたい苦痛と被害に留意し」、人道の諸原則の推進における公共の良心の役割のために国連やヒバクシャによりなされた努力を認識する。前者は、「被爆者が歩んだ苦難の歴史から核兵器の非人道性を際立たせるため」と評価されている。

 核兵器あるいはその他の核爆発装置の開発、実験、製造、生産、獲得、保有、貯蔵、移譲、受領などを包括的に禁止する(1条)。「核兵器の威嚇の禁止」は、核抑止力を否定するものとして、7月3日の「議長最終案」で初めて提示された画期的な規定である。

 核兵器の使用または実験により影響を受けた被害者に対する医療やリハビリなどの支援、汚染された地域の環境回復義務も規定された(6条)。

日本政府の態度

 唯一の被爆国日本は、3月の交渉会議初日に不参加を宣言、岸田外相は「核兵器国と非核兵器国の対立をいっそう深めるという意味で逆効果にもなりかねない」とし、あたかも非核兵器国が核兵器廃絶を妨げているような暴言を吐いた。高見沢軍縮大使は、核保有国の参加が見込めないことから「実際に核保有国の核兵器が一つも減らなくては意味がない」などと述べて、会議の席を立った。高見沢氏は、安保法制懇において、事務方の一翼を担い、「集団的自衛権の行使は地球の裏側まで及ぶ」と述べた人物である。

 こうして、日本は核兵器国と非核兵器国の「橋渡し」になるどころか、非核兵器国、核廃絶を願う人たちの信頼を完全に失い、アメリカの属国であることを国連の場で宣言したのであった。

 岸田外相の発言は、1996年国際司法裁判所の「核兵器使用の合法性」に関する勧告的意見に逆らうものである。裁判所は、長期的には、核兵器などの破壊的な兵器の法的地位に関して意見の対立が続けば、国際法、それが律するべき国際秩序の安定性が、悪影響を被ることになるのは必至であるとし、完全な軍縮の早期達成こそが必要であると呼び掛けたのであった。

核兵器廃絶を目指して

「非核の政府を求める会」の重要な役割

 国際社会は大きく変化してきた。それは、国際社会の民主化の進展であり、大国の横暴に異議を唱える国、市民の声の高まりが導いたものである。そうした進展が、核兵器を「核抑止力」を含めて全面的に違法化し、核保有国とその同盟国を追い詰めてきたのだ。核兵器の全面的な廃絶を達成するために、国内外における世論の圧力をより強めていかなければならない。「非核の政府を求める会」の役割はますます重要である。

近日刊行 非核の政府を求める会パンフレット B5判 120頁 頒価1,000円

 

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非核自治体運動の多彩な活動と前進の展望

非核の政府を求める石川の会事務局長

神田 順一

 ことし7月に県内全市町が平和首長会議に加盟しました。2008〜11年は5自治体だけでした。その後、毎年着実に増えた、この5年間の取り組みについて報告します。

 2012年4月、私たちは「平和事業に関する自治体アンケート」に踏み切りました。その自治体アンケートの集約結果と共に、会報を全自治体に送りました。会報は5年近く毎月送っています。同年7月から非核平和行政を取材し、これまでに9自治体と接点ができました。これを会報に載せ、ホームページで公開してアピールしました。そういう取り組みと、平和首長会議事務局の働きかけが相まって、全市町100%加盟が実現できました。

(平和行政を担う自治体職員との接点を広げる視点)

 平和行政を担う自治体、とくに幹部職員と接点を広げる視点を大事にしました。きっかけは、非核埼玉の会の自治体アンケートで「今年度の平和事業計画」がびっしり書かれていました。石川の会でも実施したいと、埼玉の会から自治体アンケートのデータを送ってもらい、2012年から始めました。

 会報「非核・いしかわ」は5人の編集体制です。評論で結実したのがコラム集『花鳥風月集』で、読者参加の『会員エッセー集』は会員88人の投稿をまとめました。ことし4月には『非核・平和の自治体づくり』も作成。手づくりで300〜500部作って会員や自治体に配布しています。

(アンケート項目を工夫して調査依頼)

 どういうアンケートをとったのか。1年目は、基本情報を入手し、平和首長会議や非核宣言自治体協議会の加盟の有無なども整理しています。3年目は、総務課のEメールアドレスを聞ける間柄になりました。4年目は、平和事業を教育委員会が行っている情報を入手しました。

 2011年に平和首長会議に加盟した七尾市は、加盟したからには何か事業をやれないかという市長の発案で、総務課として「平和写真パネル展」を具体化し毎年パネル展を続けています。白山市は被爆70年を記念して平和首長会議に加盟し、長崎市から被爆資料を借りて「長崎 戦争・原爆被災展」を開催しました。輪島市では、被爆医師・清水正明先生が描き、市に寄贈された被爆絵画を市教育委員会が引き継ぎ、毎年8月に被爆絵画展を開催しています。野々市市の「原爆と人間展」には平和都市宣言の決議、中学生の「平和の旅」の実施内容などが掲示されています。「平和の旅」の参加報告は「原爆と人間」展と同じ市役所のフロアに掲示しています。金沢市は図書館が3館あり「原爆と人間」展を毎年巡回して展示しています。

(国民平和大行進石川県実行委員会との連携)

 私は2013年3月末に定年退職し、6月に国民平和大行進の県内「通し行進者」にチャレンジしました。よかったのは、事前に5月に全自治体を訪問し、総務課長クラスに平和行政の推進などを丁寧に要請できたことです。以来私は、県内通し行進・自治体訪問を4年続けています。そのとき自治体アンケートを総務課長に直接手渡すので、必ず回答をもらえます。

 志賀町は2015年6月、非核平和の宣言・標柱を、私たちが志賀町役場に向けて平和行進する前の週に改修して迎えてくれました。中能登町も「非核・平和宣言の町」という標柱をつくりました。そのときハナミズキの記念植樹があり、その鍬入れ式を町長、議長と行進団団長の3人で行うという好待遇でした。こういう先進的な自治体も生まれてきました。

(平和首長会議事務局と連携した取り組み〉

 私は、これまでに3度、平和首長会議事務局を訪問しました。初めて訪問したとき、非核石川の会が自治体に平和首長会議への加盟を呼びかけていることを伝えたら、担当課から感謝されました。2回目は、担当課長から、その年の1月に国際平和推進部長と主事が加賀、小松、能美の各市を訪問し、平和首長会議に加盟する確約を得たと聞き、びっくりさせられました。

(今後の課題と展望)

 平和首長会議100% 加盟は目標ではなく新たなスタート地点です。原爆パネル展も100% 実現をめざしたい。平和首長会議の県内の加盟自治体会議を、平和首長会議事務局の協力も得て実現したいと考えています。それから、「ヒバクシャ国際署名」を自治体の中でどう位置づけるのか、いろんな取り組みを通じて粘り強くやっていきたいと思います。

◎本稿は「非核の政府を求める会ニュース」2017年2月15日号に掲載された非核石川の会の活動報告(要旨)です。近日刊行の「非核自治体運動シンポジウム記録集」にはパネリストを務めた神田順一事務局長の発言全文が収録されています。記録集を購入希望の方はHPのお問い合わせメールフォームにてご連絡ください。

 8月2日~4日、広島市内で原水爆禁止2016年世界大会・国際会議が開催されました。4日の閉会総会で採択された「国際会議宣言」を以下に紹介します。

 

原水爆禁止2016年世界大会・国際会議宣言

 71年前、アメリカは広島と長崎に原子爆弾を投下し、人類に対してはじめて核兵器を使用した。二つの原爆は、莫大な破壊力と放射線によって、都市を焼きつくし、その年のうちに21万人の市民の命を奪った。それは、この世の地獄であった。生き残った被爆者も長年にわたって、後遺症や差別などに苦しめられてきた。このような非人道的な兵器は、いかなる状況のもとでも、再び使用されてはならない。
 しかし、核保有国はいまだ1万5000発をこえる核弾頭を持ち続けている。少なくない核兵器が使用態勢下にあり、地域的な緊張激化による核戦争の懸念もある。現存する核兵器の数%が使用されただけでも、重大な気候変動が起き、人類が滅亡の危機にさらされるとの研究もある。核兵器の使用を防止する最大の保証はその廃絶であり、それは人類の生存にかかわる緊急課題である。
 国際の法と正義は、大量殺戮兵器を非合法としてきた。生物兵器や化学兵器が国際条約で禁止されたように、核兵器も違法なものとして、ただちに禁止されなければならない。

 いま「核兵器のない世界」への扉を開こうとする新たな動きがうまれている。核兵器を禁止し、廃絶する条約についての実質的な議論が、国連ではじまったのである。
第70回国連総会は、核兵器禁止条約の交渉開始をもとめる決議を多数で採択するとともに、「核兵器のない世界」を実現するための「具体的で効果的な法的措置」を議論する作業部会(OEWG)の設置を、7割をこえる加盟国の賛成で決定した。作業部会は、核兵器禁止条約の内容や2017年の条約交渉の会議開催なども提案される画期的な会議となった。我々は、作業部会が今秋の国連総会に対して、核兵器禁止・廃絶の条約の交渉開始をふくむ具体的な勧告を行うことを要請する。
 こうした発展をうみ出した根本的な力は、核兵器の非人道性、残虐性を訴えつづけてきた被爆者を先頭とする世界の反核平和の運動である。国際政治の場での被爆者の訴えは、大きな反響を呼んだ。世界の反核平和運動が結集した2015年の核不拡散条約(NPT)再検討会議を契機に、核兵器を禁止する法的拘束力のある措置を求める流れがいっそう大きく広がってきた。
 今秋の国連総会では、作業部会の報告をうけた議論がおこなわれる。核兵器を条約で禁止し、廃絶することは、長年にわたる原水爆禁止世界大会の要求である。その実現にむけ、いまこそ圧倒的な世論を創りださなければならない。

 米露英仏中の核保有五大国は共同して、この流れに敵対している。核保有国とこれに追随する同盟国の姿勢が、「核兵器のない世界」へのもっとも大きな障害であることが鮮明になっている。
 作業部会をボイコットした核保有五大国や、その代弁者となった日本など同盟国は、核兵器廃絶にただちに踏み出すことに反対し、「ステップ・バイ・ステップ(一歩、一歩)のアプローチこそ唯一の実際的な道」などと主張している。この「アプローチ」が、核軍備縮小撤廃にむけて、まともな「一歩」を踏み出せていないことは、歴史的な事実であり、核兵器廃絶を未来永劫に先送りする立場に他ならない。
 核兵器の非人道性の議論におされた核保有国は「安全保障の側面も考慮すべき」などといって、「核抑止力」論にしがみついている。だがその本質は、「国益」を守るために、他国への核兵器の使用や威嚇を認める危険きわまりないものである。しかも、「自衛」の名による核拡散を誘発し、平和への脅威を拡大してきた。
こうした核保有国の道理のない姿勢を打ち破ってこそ、「核兵器のない世界」への扉をひらくことができる。

 今日の最大の焦点は、核兵器を禁止し、廃絶するための条約にある。その交渉開始と締結を求める世論と運動を強めることに全力をつくさなければならない。核兵器の先制不使用と使用禁止、核実験禁止、核兵器の開発・更新・近代化の中止、核兵器削減なども重要である。これらの措置の実現は、核兵器禁止の合意を求める世論と運動の発展とあいまってこそ、いっそう効果的なものとなる。
 非核兵器地帯は、地域の平和と安全にとっても重要な貢献となっており、その拡大、強化が求められる。NPT再検討会議の合意である中東の非核地帯化をめざす国際会議をすみやかに開催すべきである。北朝鮮の核問題は、六カ国協議の再開をふくめ、外交的に解決されなければならない。
 国連憲章の平和的原則と国際法にもとづき、武力の行使とその威嚇を抑え、地域の紛争や係争案件を平和的に解決することは、「核兵器のない世界」へ前進するうえでも重要である。無差別殺戮を行うテロリズムは、国際社会が一致して非軍事的な手段によって追いつめ、根絶しなければならない。核兵器拡散を防ぐためにも、核兵器禁止・廃絶の合意が急がれる。
 核戦力の維持・開発をふくむ軍事費の大幅な削減による国民のための予算創出、貧困と格差の解消、国民の生活と福祉の向上、人権と民主主義の擁護は、「平和で公正な世界」にとって欠かせない。

 日本政府は、被爆国にふさわしい役割が求められているにもかかわらず、国際的には、核兵器禁止条約の交渉開始に反対し、核保有国の代弁者の役割をはたしている。国内では、被爆体験に根差した憲法の平和原則を踏みにじって、戦争法=安保法制制定を強行し、海外での戦争に参加する態勢を強化しつつある。そして、アメリカの「核抑止力」に依存して、核兵器の使用さえも認める立場をとっている。これらの根底にあるのは、日米軍事同盟を絶対視する政治である。
 これにたいして広範な国民が、戦争法廃止と立憲主義の回復を求めてたちあがっている。それを背景に、7月の参議院選挙では統一候補の擁立など野党共闘も発展した。沖縄では、米軍新基地建設に反対する統一候補が与党の閣僚議員を破るという結果が示された。日本の反核平和運動は、このたたかいの一翼をになって奮闘してきた。原水爆禁止2016年世界大会-国際会議は、憲法を守り生かし、非核平和の日本をもとめる運動に連帯を表明する。

 核兵器のない平和で公正な未来をひらく最大の力は、諸国民の世論と運動の発展である。我々は、以下の行動をよびかける。
―世界で数億の署名を目標にした「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」をはじめ、核兵器を禁止し、廃絶する条約の交渉開始を求める世論を発展させよう。そのためにも、広島・長崎の被爆の実相の普及、被爆者の証言活動を国際的に推進する。国連総会、国連核兵器廃絶デー(9月26日)や国連軍縮週間(10月24日~)などを節目として行動を発展させよう。
―被爆者への援護・連帯をすすめ、国家補償を実現しよう。核実験や原発事故被害者の救済を求め、福島第一原発事故の被災者への支援を強めよう。原発ゼロを求める運動との連帯を発展させよう。枯葉剤、劣化ウラン弾などの戦争被害者を支援しよう。武力紛争やテロの犠牲者を支援しよう。
―反戦・平和、沖縄・グアムはじめ外国軍事基地の縮小・撤去、武器輸出と軍事産業の規制、軍事費削減と生活、雇用、福祉の向上、貧困と格差の解消、気候変動の防止と地球環境の保護、性差別はじめあらゆる差別の克服など、社会的不正義にたちむかい、持続可能な発展をめざすあらゆる運動と連帯しよう。

 被爆者は訴えている―「後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したい」(「ヒバクシャ国際署名」の「訴え」より)。この切実な願いにこたえ、決意をあらたに「核兵器のない平和で公正な世界」へ前進しよう。

2016年8月4日

原水爆禁止2016年世界大会―国際会議

 輪島市が平和首長会議に加盟しました

  平和首長会議ホームページの10月1日付新着情報に石川県輪島市(梶文秋市長)など「新たに37自治体が平和首長会議のメンバーに加わりました。これにより、加盟都市数は世界161か国・地域6,857都市となりました」と掲載されました。

 平和首長会議への国内自治体加盟状況(2015年10月1日現在)は別表のように91.4%に達しています。         

平和首長会議への国内自治体加盟状況 (2015年10月1日現在)
【国内自治体の加盟状況】  
区分 総数 加盟数 加入率
 790  760 96.2%
東京23区   23    21 91.3%
 745  652 87.5%
 183  159 86.9%
1741 1592 91.4%

 

    輪島市の平和首長会議加盟により、県内自治体の加盟は15か所となり、加入率は78.9%になりましたが、北信越各県と比べても石川県の加入率の低さが際立っています。

北信越各県別平和首長会議加盟状況 (2015年10月1日現在)
県名
総数 加盟 加入率 総数 加盟 加入率 総数 加盟 加入率 総数 加盟 加入率
新潟県 20 20 100.0% 6 6 100.0% 4 4 100.0% 30 30 100.0%
富山県 10 10 100.0% 4 3 75.0% 1 0.0% 15 13 86.7%
石川県 11 8 72.7% 8 7 87.5% 19 15 78.9%
福井県 9 9 100.0% 8 7 87.5% 17 16 94.1%
長野県 19 19 100.0% 23 23 100.0% 35 35 100.0% 77 77 100.0%
69 66 95.7% 49 46 93.9% 40 39 97.5% 158 151 95.6%
                         
            国内自治体加盟状況 総数 加盟 加入率
                    1741 1592 91.4%

  

 引き続き、未加盟自治体における動向を注視していきましょう。

  • 加盟自治体=金沢市、七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、白山市、かほく市、野々市市、内灘町、川北町、津幡町、志賀町、宝達志水町、中能登町、能登町
  • 未加盟自治体=小松市、加賀市、能美市、穴水町

 

白山市 平和首長会議に加盟

    平和首長会議ホームページの8月1日付の新着情報にて、石川県白山市(山田憲昭市長)など「新たに46自治体が平和首長会議のメンバーに加わりました」「これにより、加盟都市数は世界161か国・地域6,779都市となりました」と掲載されています。

 国内での平和首長会議加盟は以下のように90.8%に達しています。 

平和首長会議への国内自治体加盟状況 (2015年8月1日現在)
【国内自治体の加盟状況】  
区分 総数 加盟数 加入率
790 758 95.9%
東京23区 23 21 91.3%
745 645 86.6%
183 156 85.2%
1741 1580 90.8%
       

 石川県における加盟は11自治体であり、加入率は57.9%に留まっています。今年5月に本会が実施した「2015年度平和事業アンケート」では〝検討中〟と回答された自治体が数か所ありました。引き続き、未加盟自治体における動向を注視していきましょう。

●加盟自治体 =金沢市、七尾市、珠洲市、白山市、かほく市、野々市市、内灘町、川北町、津幡町、志賀町、中能登町

●未加盟自治体=小松市、輪島市、加賀市、羽咋市、能美市、宝達志水町、穴水町、能登町

 

 平和首長会議ホームページには、国内加盟自治体で計画されている「被爆70年記念事業」も紹介されています。

<国内加盟自治体における取組例>

・被爆体験講話

・被爆樹木植樹、平和の灯を活用した取組

・被爆関連の資料や写真、パネル、ポスター、絵画の展示

・平和関連の映画・ビデオの上映会

・平和祈念式典

・平和コンサート

・小中高生の被爆地派遣、体験学習

・平和学習講座

・標語、作文、絵画コンクール

 本会の「2015年度平和事業アンケート」では県内の加盟自治体のなかで〝予算ゼロ、事業ゼロ〟と回答されたところもありました。上記の<取組例>を参照いただき、「被爆70年」に相応しい事業展開を期待しています。

石川県内の行進の様子を毎日写真入で報告

2015.6.15 森本駅前②

・能登コース &富山~広島コースを行進しました。

5月30日、非核の政府を求める会常任世話人会が開催されました。原和人常任世話人からその報告がありました。要旨を紹介します。

NPT再検討会議第3回準備委員会

 4月23日から5月7日まで、ニューヨーク国連本部において開催された。議長はスジャトナン・インドネシア外務次官が務めた。

平和と自由を求める国際婦人連盟のカブリエラ・アーステンさんの「第3回準備委員会の議長作業文書と討論の基本点」という資料が報告された。

「議長は、自らの勧告案を作業文書に変更した。

ブラジルは、勧告案ができなかったことについて遺憾の意を表明した。

アルゼンチンは、この再検討会議(準備委員会)は、勧告を作成する任務を持っているが、締約国は柔軟な立場をとり中長期的な目標を展望する必要があると述べた。 

メキシコは、核兵器の破滅的な人道上の影響およびその問題に関し、オスロとナヤリットの両会議を反映していないと表明し、新アジェンダ連合が示唆した核軍備撤廃に関する補助機関について、作業文書が触れるべきであると述べた。

スイスは、作業文書が来年の再検討会議を準備する上で参考になるだろうと述べた。

2015年の再検討会議について

アメリカは、NPTの三本柱(核不拡散、核軍備縮小撤廃、原子力平和利用)について、包括的、かつ、均衡のとれた再検討をすべきと述べた。

キューバは、2010年の再検討会議の行動計画が出発点になるべきであると述べ、ステップバイステップ方式が、現状維持の口実とされてはならないと述べた。

メキシコは、2015年が2010年の単なる繰り返しにしてはならない。2015年の会議を、核兵器国における義務の不履行に焦点をあてるべきだと述べた。

その他、キューバは、一定の時間枠の中での核兵器の法的拘束力のある禁止を要求した。また核兵器国が良く用いるレトリックと彼らのコミットメントとの大きな隔たりを指摘した。

アメリカロシアは、中央アジア非核地帯条約に調印したことを強調した。

ロシアは、東南アジア非核地帯条約においても、2015年までに合意を得るべきだと主張した。

新アジェンダ連合メキシコスイスは、準備委員会における市民社会の貴重な貢献を歓迎すると述べた。」  

 

一般報道は来年のNPT再検討会議に向けて前進はなかったとされているが、核兵器の非人道的な結末の論議で、核兵器国がかなり追いつめられているという報告があった。

(編集部:作業文書・合意に至らなかった諸提案をまとめた報告書。文責は非核いしかわ・編集委員会)

軍縮・不拡散(NPDI)広島外相会議

「広島宣言」について

 

 4月25日、非核の政府を求める会常任世話人会が開催され、原和人常任世話人会から次の報告がありました。 

 4月11日~12日、第8回軍縮・不拡散イニシアチィブの外相会議が、日本で初めて被爆地広島で開催され、12ヵ国(*)が参加した。

核兵器に対する三つの態度

 現在、世界の国々が、核兵器に対してどのような態度をとっているかという視点で見ると、大まかには三つのグループに分類することができる。

 一つは米ロを中心とする核兵器保有国があり、「核のない世界をめざす」(2009年4月オバマ演説)と言いながらも、核兵器の廃絶を遠い将来の課題に置き、当面は核兵器による世界秩序を維持しようとする国々である。

 二つ目はその対極として、核兵器の非人道性という観点から、核兵器の使用を禁止する核兵器条約によって、核戦争による被害者を再び生み出さないとする非同盟諸国を中心とする国々のグループである。  

 これらの国々は、「核兵器の非人道性に関する声明」を発表し、第1回目のオスロ、第2回目のメキシコのナヤリットで政府間の会議を行い、今年末には、オーストリアのウィーンで3回目の会議の開催を計画している。

 もう一つのグループは、日本やオーストラリアを中心とする国々で、核兵器は保有していないが、軍事同盟などによって核兵器保有国の核の傘の下にある国々が中心である。これらの国々が、軍縮・不拡散イニシアチィブ(NPDI)というグループを形成しており、今回、第8回目の外相会議を広島で開催した。

各国の外相原爆資料館で実相に触れる

 今回のNPDIの会議が、被爆地広島で開催され、各国の外相が原爆資料館などの被爆の実相にふれたことは大いに評価できる。

 毎日新聞の報道によれば、会議終了後の共同記者会見で、トルコのダウトオール外相は、「ここで見聞きしたことは一生忘れない」と述べ、ドイツのシュタインマイヤー外相も、「広島、長崎の大惨事は二度と起こしてはならないという信念を与えてくれた」と語ったという。また、被爆の実相を目の当たりにして、今回の会議でも、核兵器の非人道性に関する論議が深まったとの報道がある。

 

1.外相会議の「広島宣言」の評価

 会議のまとめとして、核兵器の廃絶に向け、すべての核保有国に対して多国間交渉の必要性を提唱する「軍縮・不拡散イニシアチィブ第8回外相会合広島宣言」文書が発表された。

核兵器の非人道性という点から、核兵器の廃絶に向けてのNPDIの国々の努力は歓迎しながらも、この「広島宣言」の問題点も少なくない。

(1)核兵器の非人道性について

 「広島宣言」は、「今日に至るまで続いている原子爆弾の破滅的で非人道的な結末を直に目撃した。 

 われわれは、原子爆弾の生存者(被爆者)の証言に非常に深く心を動かされた」と述べている。確かに、核兵器の非人道性を理解するには、広島の地が最もふさわしい。しかし、「非人道的な結末」という一言で語るのではなく、核戦争がどのような結末をきたすのかという具体的な事実がもう少し語られてもよかったのではないか。

 今年の2月に開催されたナヤリットの会議の議長総括では、その非人道性の中身が具体的に述べられ、最後に「明白な事実は、いかなる国家あるいは国際機関であろうと、核兵器爆発が起きた際に適切に対応し、必要とされる短期及び長期的な人道援助や防護を提供する能力を持たないということである」と述べている。

 今回の広島の会議でも、現代の百万都市に、16キロトンの広島型原爆と、1メガトンの水爆が投下された場合のシュミレーションが報告され、近代化された都市においては69年前のヒロシマ、ナガサキをはるかに上回る被害が予測された。また、NPDIに参加した各国の外相たちが、自ら見聞きした「非人道的な結末」を「広島宣言」に盛り込んだならば、核兵器廃絶に向けてのより強いメッセージになったに違いない。

(2)核兵器不使用の記録が永久に続けられること

 「広島宣言」には、「すべての国に対して、あらゆる核兵器の使用の潰滅的で非人道的な結末に対する深い懸念を再度表明することを求める。このような結末にかんがみると、約69年に及ぶ核兵器不使用の記録が永久に続けられるのはすべての国々にとって利益である」と述べている。

それに引き続いて、「従って、核兵器が再び使用されることがないように核兵器の使用を禁止する核兵器条約の交渉の開始を速やかに行うべきである」とコミットするのが論理の流れであるが、この「広島宣言」には、核兵器条約に関する言及が一言もない。

 うがった見方をするとすれば、「69九年に及んで、核兵器が使われなかった」理由は、核兵器の抑止力によるものであり、「核兵器不使用の記録が永久に続ける」ためには、従来通りの核兵器の抑止力が必要であると、引き続き核兵器の存在を肯定するものと理解されても不思議ではない。

 核兵器が69年間使用されなかった理由は、全くの偶然の幸運であったことは、様々な歴史の事実が証明している。

(3)ウィーンの会議の計画につき、さらなる論議が行われること

 「広島宣言」は、オスロからナヤリットに至る「核兵器の非人道的な結末に関する知見を深めること」を歓迎し、「オーストリア政府が、本年度後半にウィーンで次の会議を開催するとの提案に留意し、会議の計画につきさらなる論議が行われることを期待する」と述べている。

 ただし、この表現も微妙な表現である。ナヤリットの議長総括では、「次回のオーストリアでの会議を熱烈に歓迎し、過去において、さまざまな兵器が法的に禁止されたのちに廃絶されたことを考慮に入れる必要がある」と述べている。すなわち、核兵器の非人道的な結末の事実から、法的な枠組みを論議すべきであるとして、具体的な方向性が示されている。これに対して、日本国政府は、「(このような法的な枠組みが論議されるようになると)、我が国として如何なる対応をとるべきか、検討する必要がある」として、今後の会議に不参加の可能性もあると示唆している。

 このような日本国政府の動きから読みとれることは、ウィーンでの会議の論議の方向性について、「さらなる論議を行うべき」として、もし、核兵器条約のような法的な枠組みに話が進むのであれば、参加しないこともあり得ると脅しをかけているようにも理解できる。

  以上のような問題点はありながらも、NPDIの会議においても、「核兵器の非人道的な結末」が中心に論議されたことは歓迎したい。この「核兵器の非人道的な結末」の探究の「結末」は、核兵器は国際人道法に違反し、核兵器の使用は決して許されるものではないとの結論以外にはあり得ないと確信するからである。

*12ヵ国は日本、オーストラリア、ドイツ、ポーランド、オランダ、カナダ、メキシコ、チリ、トルコ、UAE,ナイジェリア、フィリピンの各国。

他にゲスト国が参加。(文責:非核いしかわ編集部)

 三月二七日、非核の政府を求める会常任世話人会が開催され藤田俊彦常任世話人から海外情勢の報告が次のようにありました。

ウクライナ問題と核兵器について

 ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス紙に掲載されたジュレミー・バーンスタインの「ウクライナと核兵器」という論文が紹介された。
「ウクライナはソ連が崩壊した一九九一年にアメリカ、ロシアに次いで世界三位の大量の核兵器を保有していた国であった。
チェルノブイリ原発の大惨事の国でもあり、現在でも一五基の発電用原発を稼働させている。国の電力の半分を核エネルギーに依存しており、核燃料の大半をロシアが提供している。
冷戦の終了時、ウクライナは一九〇〇発の戦略核弾頭を保有していた。クリミア半島のクラスノカメンカには、ソ連の最も重要な核兵器施設があり、核弾頭の組み立てや貯蔵が行われていた。
一九九〇年ウクライナ議会は、核兵器を自国から排除する非核政策を採択した。しかし、一九九二年にクチマ大統領は、核ミサイルの一部を貯蔵し続けるべきであると提案したが、一九九四年ウクライナ議会は、再度ウクライナを核のない国にすることを決議した。そして同時に、ウクライナは『ブダペスト・メモランダム』(ブダペスト合意)に調印した。
このブダペスト合意は、ロシア、ウクライナ、アメリカおよびイギリスによって調印されたもので、『核兵器を放棄する代わりに、ウクライナの主権と国境を尊重する、軍事的な挑発を行わない、経済的な制裁を行わない』とするものである。ただ、これは『assurances(約束)』と表現されており、「guarantees(保証)」ではなかった。もし、『保証』であったなら、国連は行動を起こすことを余儀なくされ、ロシアを厳しい立場に追いやっただろう。
もし、クチマが望んだように、ウクライナが核兵器を保有し続けたとしたら、今回の事態はどうなっていたのか興味がある所である。」と述べている。 

 米国の対ロ制裁措置の効果

 アメリカのジェームズ・リンゼイ外交問題評議会上席副会長がインターネット上で発表した「米国の対ロ制裁措置の効果の行方」という論文が紹介された。
「ロシアによるクリミアの敵対的奪取を処罰する処置として、アメリカは制裁措置を課した。しかし、その対象者であるロシアの要人の一人であるロゴジン副首相は、『オバマ大統領がいたずら者に制裁措置を作らせたに違いない』と嘲笑した。
このアメリカによる制裁措置は、オバマ大統領が四つの決定的な重要課題をマスターするかどうかにかかっている。
・『欧州全体を参画させる』かどうかである。フランスはロシアに武器輸出を行っており、イギリスは、ロシアの新興財閥にサービスの提供を行っている。また、新興国である中国、ブラジル、インドは、国境尊重論の熱烈な擁護者であったにもかかわらず、クリミア紛争ではだんまりを決め込んでいる。
・『対抗圧力を屈折させる』かどうかである。制裁措置は標的国が反撃できない時にもっとも効果をあげるが、ロシアはイランの核計画を阻止する活動を邪魔することができるし、アフガニスタンやパキスタンを支援することができる。
・『紛争エスカレートの引き金を引かない』ことである。アメリカは、ロシア企業もしくは個人と米国あるいは他の国の金融ルートを閉ざすという選択もとり得る。しかし、そうなった場合、米国と最も親密な同盟国(ドイツなど)すらも疎遠にしてしまうだろう。もし、そういうことになれば、ロシアはウクライナ東部におけるロシアの行動を活発化させるかもしれない。
・『制裁実施に時間をかける』ことである。ロシアのように、一定の財政的余裕のある国は、しばらくの間、経済的強要を凌ぐことができる。ロシアが痛みを感じるのは、数年とは言わないまでも数ヶ月を要するであろう。
オバマ大統領は、この四つの課題をマスターすることは難しいが、制裁措置はロシアに対して、相当な成果をあげることになるであろう。制裁措置は、欧州諸国にロシアへの依存度を減らし、他の地域への投資を増やすことになるであろう。どちらにしても、ロシアにとって良いニュースではない。時がたつにつれて、ロゴジンおよび彼のボス、プーチンは『いたずら者』の本物の痛みを感じさせることができることに気づくかもしれない。」
(原和人非核の政府を求める会常任世話人の報告から 文責・編集部)

 

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