非核平和の海外情勢

 三月二七日、非核の政府を求める会常任世話人会が開催され藤田俊彦常任世話人から海外情勢の報告が次のようにありました。

ウクライナ問題と核兵器について

 ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス紙に掲載されたジュレミー・バーンスタインの「ウクライナと核兵器」という論文が紹介された。
「ウクライナはソ連が崩壊した一九九一年にアメリカ、ロシアに次いで世界三位の大量の核兵器を保有していた国であった。
チェルノブイリ原発の大惨事の国でもあり、現在でも一五基の発電用原発を稼働させている。国の電力の半分を核エネルギーに依存しており、核燃料の大半をロシアが提供している。
冷戦の終了時、ウクライナは一九〇〇発の戦略核弾頭を保有していた。クリミア半島のクラスノカメンカには、ソ連の最も重要な核兵器施設があり、核弾頭の組み立てや貯蔵が行われていた。
一九九〇年ウクライナ議会は、核兵器を自国から排除する非核政策を採択した。しかし、一九九二年にクチマ大統領は、核ミサイルの一部を貯蔵し続けるべきであると提案したが、一九九四年ウクライナ議会は、再度ウクライナを核のない国にすることを決議した。そして同時に、ウクライナは『ブダペスト・メモランダム』(ブダペスト合意)に調印した。
このブダペスト合意は、ロシア、ウクライナ、アメリカおよびイギリスによって調印されたもので、『核兵器を放棄する代わりに、ウクライナの主権と国境を尊重する、軍事的な挑発を行わない、経済的な制裁を行わない』とするものである。ただ、これは『assurances(約束)』と表現されており、「guarantees(保証)」ではなかった。もし、『保証』であったなら、国連は行動を起こすことを余儀なくされ、ロシアを厳しい立場に追いやっただろう。
もし、クチマが望んだように、ウクライナが核兵器を保有し続けたとしたら、今回の事態はどうなっていたのか興味がある所である。」と述べている。 

 米国の対ロ制裁措置の効果

 アメリカのジェームズ・リンゼイ外交問題評議会上席副会長がインターネット上で発表した「米国の対ロ制裁措置の効果の行方」という論文が紹介された。
「ロシアによるクリミアの敵対的奪取を処罰する処置として、アメリカは制裁措置を課した。しかし、その対象者であるロシアの要人の一人であるロゴジン副首相は、『オバマ大統領がいたずら者に制裁措置を作らせたに違いない』と嘲笑した。
このアメリカによる制裁措置は、オバマ大統領が四つの決定的な重要課題をマスターするかどうかにかかっている。
・『欧州全体を参画させる』かどうかである。フランスはロシアに武器輸出を行っており、イギリスは、ロシアの新興財閥にサービスの提供を行っている。また、新興国である中国、ブラジル、インドは、国境尊重論の熱烈な擁護者であったにもかかわらず、クリミア紛争ではだんまりを決め込んでいる。
・『対抗圧力を屈折させる』かどうかである。制裁措置は標的国が反撃できない時にもっとも効果をあげるが、ロシアはイランの核計画を阻止する活動を邪魔することができるし、アフガニスタンやパキスタンを支援することができる。
・『紛争エスカレートの引き金を引かない』ことである。アメリカは、ロシア企業もしくは個人と米国あるいは他の国の金融ルートを閉ざすという選択もとり得る。しかし、そうなった場合、米国と最も親密な同盟国(ドイツなど)すらも疎遠にしてしまうだろう。もし、そういうことになれば、ロシアはウクライナ東部におけるロシアの行動を活発化させるかもしれない。
・『制裁実施に時間をかける』ことである。ロシアのように、一定の財政的余裕のある国は、しばらくの間、経済的強要を凌ぐことができる。ロシアが痛みを感じるのは、数年とは言わないまでも数ヶ月を要するであろう。
オバマ大統領は、この四つの課題をマスターすることは難しいが、制裁措置はロシアに対して、相当な成果をあげることになるであろう。制裁措置は、欧州諸国にロシアへの依存度を減らし、他の地域への投資を増やすことになるであろう。どちらにしても、ロシアにとって良いニュースではない。時がたつにつれて、ロゴジンおよび彼のボス、プーチンは『いたずら者』の本物の痛みを感じさせることができることに気づくかもしれない。」
(原和人非核の政府を求める会常任世話人の報告から 文責・編集部)

 

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