年頭所感 「ご飯論法」または「白馬は馬に非ず」 (五十嵐正博)

【2019年 年頭所感】 

「ご飯論法」または「白馬は馬に非ず」

代表世話人 五十嵐正博

 明けましておめでとうございます。

 昨年、「ご飯論法」が流行語大賞トップ10に選ばれました。安倍政権の嘘、詭弁を一言で言い当てたことが評価されたのでしょう。ところが、87年、本会設立の前年、加藤周一さんは、紀元前、中国戦国時代に公孫龍が唱えた「白馬は馬に非ず」の故事をひいて、中曽根政権の「嘘」を暴いていました。

 加藤さんが、朝日新聞に連載した『夕陽妄語』にあります(2月20日付)。加藤さんの慧眼に改めて驚きます。加藤さんを引用すれば「<白>が一、<馬>が一、あわせて<白馬>が二、二は一に非ず」という詭弁論法です。加藤さんは、中曽根さんの「大型間接税」導入、「国家秘密法」の目論見を許せなかったのでしょう。加藤さんを引用したのは、当時と今日の状況があまりに似通っているからです。中曽根さん、安倍さん、ともに改憲に情熱を持つところも同じです。

 86年、中曽根さんは、「解散は考えていません、選挙はやらない」と公言しながら、いわゆる「死んだふり(寝たふり)解散」をし、7月に衆参同日選挙を強行しました。そして、「大型間接税」は導入しないと言明しながら、87年2月、「新型間接税」である「売上税」は「大型間接税」ではないとの詭弁を弄し、「売上税法案(税率5%)」を国会に提出したのです。

 しかし、中曽根さんの「嘘」に対する国民の反発は強く、「税制改悪・売上税粉砕」のスローガンの下、全国各地で「売上税反対集会」が開かれ、3月の参議院補選(岩手県選挙区で社会党候補が圧勝)4四月の統一地方選挙で自民党が敗北、その結果、「売上税法案」は廃案となりました。

 中曽根さんの「嘘」は、89年の参議院選挙における自民党の全国的敗北まで自民党退潮の端緒となりました。私たちは、この歴史的事実を大いに教訓にしなければなりません。

 加藤さんは、敗戦後、焼け野原となった東京を見て、「私にとっての焼け跡は、単に東京の建物の焼き払われたあとではなく、東京のすべての嘘とごまかし、時代錯誤と誇大妄想が、焼き払われたあとでもあった。」と綴っています(『羊の歌』岩波新書)。「あのいくさを歓呼して迎えた人々は、どこへ行ったのか。それよりも彼らをだまし死地へ追い立て、敗色濃くなるや、『焦土戦術』などという無意味に残酷なうわ言を口走っていた人々は、一体どこへ行ったのか」と。

 「息を吐くように嘘を吐く」「ごまかし(公文書改ざん、隠蔽工作、データ捏造)」「時代錯誤(復古的憲法)」「誇大妄想(アベノミクス)」「戦後レジームからの脱却」「人づくり革命」「一億総活躍社会」などは、時代錯誤と誇大妄想の混然一体型といえるかもしれません。安倍さんは、「強固な日米同盟のために」の文脈で「沖縄の皆様の心に寄り添う」と語りました。アメリカのために新基地を建設し、トランプの言いなりに高額兵器を爆買いし、そして、沖縄の民意を無視し、足蹴にする、それが安倍さんにとって「沖縄の皆様の心に寄り添う」こと。なんという残酷で、冷酷無比な心の持ち主なのでしょうか

 この国を焼け野原にしないために、安倍さんには一日も早い退陣を求めます。4月の統一地方選挙、7月の参院選(ダブル選挙?)で自公政権を敗北に追い込まなければなりません。

 「市民連合」は、今年の年頭所感で次のように呼びかけています。「立憲主義の回復、安保法制の廃止、安倍改憲の阻止などの一致点を土台に、誰もが自分らしく暮らせる社会や経済をつくるための政策を今後どれだけ具体的に構想し、発信していくことができるか、そうして、政治をあきらめてしまった有権者たちを今一度呼び戻すことができるかが私たちに問われていると考えます。」

 加藤さんは、上記エッセイを次のように結んでいます。「日本国民の力量によるのである。」おっしゃるとおりです。

 

 

 

 

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