「理解不能なことばかり」  五十嵐正博

<年頭所感>

「理解不能なことばかり」

代表世話人 五十嵐正博

 明けましておめでとうございます。

 コロナ禍の下、沈鬱な空気が世界を覆っているようです。コロナ禍は、私たちに「人知の及ばぬ世界」があることを改めて気付かせました。人間の「おごり」を戒めるかのようです。世界の各地で深刻な人権侵害が、そして植民地支配も続いています。核兵器が瞬時にして人類を絶滅させ、温暖化が、地球環境、生態系をじわじわと蝕んでいく、「わかっちゃいるけど止められない」サガを人間は捨て去ることができないままです。そうした事態を止めようと、世界中で、日々抗議し、抵抗する多くの人々の姿もあります。核兵器の廃絶を願い、あるいは、地球危機を防ごうという若者たちの「抵抗の輪」が希望の光です。

 今年は、「沖縄返還」、「日中国交正常化」から50周年、政府は、沖縄の民意を一顧だにせず、日中関係は融和と緊張を繰り返しています。「画期」にどれだけの意味があるか、少なくとも来し方を振り返り、未来への展望を考える契機にしなければなりません。

 私の日常も様変わりし、一昨年1月から昨年11月までただの一度も県外にでたことはありません。その間にも、格差社会は急速に進み、意図的に「脅威・対立」をあおりつつ、改憲の策動が加速されつつあります。「もりかけさくら」など「臭いものにはフタ」をされたまま。

 本稿では私がずっと、あるいは最近、不思議に思っていること、しかし、なぜか世の中の関心を呼ばないいくつかを「新年雑感」として記すことにします。

 

池明観さん・戦後補償・拉致問題

 池さんについては、井上さんが「所感」で述べられていますので、私が付け加えることはありません。池さんは、20年前、戦後補償問題が顕在化した理由を、日韓における「成熟した市民社会」「確かな歴史認識」の出現にあると指摘されました。

 それらは、今、どこにいってしまったのでしょうか。とりわけ、安倍政権以降、加害者(日本)が被害者(韓国)に高圧的な態度をとり続ける傲慢さ・理不尽さは、池さんの期待を砕くものです。また、歴代内閣が、「北朝鮮を激しくののしってきた」少なくとも5名(特に第2次安倍内閣の2名)の日本会議国会議員懇談会所属の重鎮を、拉致問題担当相に任命してきたことは、到底理解に苦しみます。北朝鮮に「もっと圧力を」と主張する安倍さんたちは、北朝鮮に「ケンカを売る」ことが拉致問題の解決になると思っているのでしょうか。

 

日米同盟・コロナ禍・米軍「即応態勢」

 日米間で「同盟」の用語が最初に現れたのは、1981年、レーガン・鈴木「日米共同声明」でした。それまで「同盟」は「軍事同盟」を意味し、憲法9条に反するがゆえに、自民党でさえその使用を避けてきたのです。以来40年、今では、見るだけ、聞くだけで身震いする「軍事造語」(「敵基地攻撃能力」「遠征前方基地作戦」「水陸機動団」など)が飛び交っています。

 日米首脳会談が行われるたびに同盟が「強化」「深化」され、「思いやり予算」は「同盟強靭化予算」と名を変え、対米従属が「強化・深化」されます。毎日のように聞かされる「自由で開かれたインド太平洋」という常套句は、「アメリカがインド太平洋の覇権を維持し続けたい」という意味です。もっとも、中国にも「尊敬される国」になってほしいと願います(もちろん日本もアメリカもすべての国が)。

 さて、「米軍由来のコロナ蔓延」、当該自治体もマスコミもそう言います。日米地位協定の改定が必要、日本はアメリカの属国かといった議論がなされています。米軍のいい加減なコロナ対策は、実は、米軍は「台湾のため、尖閣のために中国と一戦を交えるつもりはない」ことの証です。軍隊に求められるのは「即応態勢」、「求めがあれば今夜にも戦える」態勢。そのためには「隊員の健康状態が良好に保たれている必要がある」(米軍関係者の言葉)。

 コロナ禍で明らかになったのは、米軍は「即応態勢」をとっていない、とるつもりもないことでした。「だから、地位協定を改定し、米軍にコロナ対策をしっかりさせよう」ではなく、「そもそも軍事基地はあってはならない、むしろ有害そのもの」なのです。

 

MDGs・SDGsと軍縮・核兵器廃絶

 SDGsをめぐる話題で持ち切りです。しかし、SDGsの前身MDGs(ミレニアム開発目標)の話はほとんど聞いたことがありません。これも不思議なことです。2000年9月、国連総会が「新たな千年期(ミレニアム)の黎明に際して」採択したのがMDGs。最初に掲げられた目標は「平和・安全・軍縮」であり、その中で、「大量破壊兵器とりわけ核兵器の廃絶に向けて努力」することも決意しました。

 ところがどうでしょう。SDGsは、「貧困の撲滅が地球の最大規模の課題」と位置付けます。そして、「MDGsで残された課題への対応」をうたい、「平和なくしては持続可能な開発はあり得ず、持続可能な開発なくして平和もあり得ない」としながら、核兵器、軍縮の用語を消し去ってしまいました。重大な後退と言わなければなりません。

 国連がSDGsを採択したのは2015年9月、核兵器禁止条約が採択される約2年前でした。核兵器を保有する5つの安保理常任理事国は、核禁条約の批准を頑なに拒み続けています。本年1月3日、それら5カ国は、突如、「核戦争に勝者なし」声明を発しました。国連事務総長が述べたように、「核リスクを排除する唯一の方法は、すべての核兵器を廃絶すること」です。

 最後に、「武力による威嚇、武力の行使は禁止される」、これが国際法の大原則であることを決して忘れてはいけません。改憲を阻止し、核兵器の廃絶を目指して、みなさんと共に微力を尽くしたいと思います。

 今年もよろしくお願いします。

会報 非核・いしかわ

絵手紙コーナー

広島被爆絵画

石川の会・沿革

アーカイブ